アカデミー賞ノミネート『父を探して』のアレ・アブレウ監督最新作

PerLiMPS

ペルリンプスと秘密の森

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イントロダクション
  • 神秘の森で謎の“ペルリンプス”を探すうちにたどり着く驚きの結末
    テクノロジーを駆使する太陽の王国のクラエと、自然との結びつきを大切にする月の王国ブルーオの二人の秘密エージェントは、巨人によってその存在を脅かされる魔法の森に派遣されている。森を守る唯一の方法は、光としてこの森に入り込んだ「ペルリンプス」を見つけること。敵対していた二人は共通する目的のために協力し合うことにする。しかし平和をもたらすという謎の生物を探すうちに、物語は思いがけない結末にたどり着く。そこに隠された人類への問いかけとは?
    独自のカラーパレットから生み出された色彩の森
    この映画の最大の魅力は、監督独自の色彩表現で描かれる「魔法の森」だろう。監督はパウル・クレーの「本当は色が私たちを支配しているのであって、その逆ではない」という言葉をひく。紙の上で、次にコンピューター上で実験を重ね最も意味のある色の組み合わせを生み出した。監督にとってこの森は「遊び心に富んだ自由な子ども時代を象徴する空間」だと言う。子どもたちがすべて可能だと信じる時、彼らは希望の力を手に入れる。しかし人は成長し巨人となり、その力のことを忘れ森もまた置き去りにしてしまう。そして監督はこう語る。「でもこの力は、実は私たちの中に眠っていて、一番困難な時期になると私たちを導いてくれる光になるのだと思っています」。
  • ひとりぼっちじゃないのは素敵なこと
    主人公のクラエとブルーオは、敵対する国同士の秘密エージェントだ。二人は正反対の世界からやってきて、全く異なる文化を持ち、一世紀にわたって対立を続けている。「それは日々高まる今日の政治的緊張に関連付けることができるでしょう」と監督は言う。クラエとブルーオは、対話、共感、そして違いを乗り越えることで、より大きな力を手に入れることができることを学んでいく。仲間がいることへの安心感や幸せは、より良い未来のための一歩を踏み出すエネルギーになる。
    アマゾンの森を守る
    エコロジーのメッセージを強調するつもりはないという監督だが、ブラジルではアマゾンの森林保護は大きな課題であり責任でもある。森林伐採の危険性や、自然と共生する方法について先住民のコミュニティから学ぶことの重要性をより強く認識している。「環境に対してより高い意識を持つ新しい世代の子どもたちが育ってきていることを私は確信しており、それが私に希望を与えてくれるのです」と言う。
  • カラフルな音の世界
    音楽を担当したのはアンドレ・ホソイで、彼が率いるパーカッショングループ・バルバトゥッキスは監督と書き下ろした主題歌「Daqui prá lá, de lá prá cá (pra Naná)(ここからあそこへ、あそこからここへ(ナナへ))」を担当。中国、ベネズエラ、コロンビアの楽器を使って多様な音色を生み出し、カラフルで異なる要素が融合する強さを表現している。カエターノ・ヴェローゾやジルベルト・ジルと並ぶムジカ・ポプラール・ブラジレイラの代表的ソングライター、ミルトン・ナシメントの「Bola de Meia, Bola de Gude  ボーラ・ヂ・メイア、ボーラ・ヂ・グーヂ (手毬にビー玉)」のインストゥルメント曲が映画の中核をなし心地よい没入感へと観客を誘う。
    アニメーションの新潮流[イベロアメリカ]の最も重要な作家 アレ・アブレウ
    欧州及び中南米のスペイン語・ポルトガル語圏諸国から構成されるイベロアメリカでは、2000年代末から共同製作など地域間での協力の促進やアニメーション業界の関係強化に向けた取り組みが進んでいる。*2018年には大西洋両岸の国々を結ぶネットワークを生み出す必要性から、アルゼンチンのアニメーション作家クリノ・クリスチャーニにちなんでクリノ・アワードが誕生し、受賞作がアカデミー賞やアヌシー国際アニメーション映画祭などでノミネートや受賞をし始めている。日本でも8月にはチリのクリストバル・レオンとホアキン・コシーニャの二人組による初の長編映画『オオカミの家』が公開され、2023年カンヌ国際映画祭のスペシャルスクリーニング部門で上映されたスペインのパブロ・ベルヘル監督の「ロボット・ドリームズ」の公開が決定するなど注目度が高まりつつある。その牽引役を担っているのが長編2作目の『父を探して』が2016年のアカデミー賞の長編アニメーション映画賞にノミネートされ『ウルフウォーカー』や『未来のミライ』なども受賞したアニー賞の長編インディペンデント作品賞を、部門創設の年に初受賞したアレ・アブレウだ。
    *cartoon brew
    「ペルリンプス(Perlimps)」とは、ポルトガル語でホタルを意味するピリランポスにヒントを得た造語。
テクノロジーを駆使する太陽の王国のクラエと、自然との結びつきを大切にする月の王国ブルーオの二人の秘密エージェントは、巨人によってその存在を脅かされる魔法の森に派遣されている。森を守る唯一の方法は、光としてこの森に入り込んだ「ペルリンプス」を見つけること。敵対していた二人は共通する目的のために協力し合うことにする。しかし平和をもたらすという謎の生物を探すうちに、物語は思いがけない結末にたどり着く。そこに隠された人類への問いかけとは?
この映画の最大の魅力は、監督独自の色彩表現で描かれる「魔法の森」だろう。監督はパウル・クレーの「本当は色が私たちを支配しているのであって、その逆ではない」という言葉をひく。紙の上で、次にコンピューター上で実験を重ね最も意味のある色の組み合わせを生み出した。監督にとってこの森は「遊び心に富んだ自由な子ども時代を象徴する空間」だと言う。子どもたちがすべて可能だと信じる時、彼らは希望の力を手に入れる。しかし人は成長し巨人となり、その力のことを忘れ森もまた置き去りにしてしまう。そして監督はこう語る。「でもこの力は、実は私たちの中に眠っていて、一番困難な時期になると私たちを導いてくれる光になるのだと思っています」。
主人公のクラエとブルーオは、敵対する国同士の秘密エージェントだ。二人は正反対の世界からやってきて、全く異なる文化を持ち、一世紀にわたって対立を続けている。「それは日々高まる今日の政治的緊張に関連付けることができるでしょう」と監督は言う。クラエとブルーオは、対話、共感、そして違いを乗り越えることで、より大きな力を手に入れることができることを学んでいく。仲間がいることへの安心感や幸せは、より良い未来のための一歩を踏み出すエネルギーになる。
エコロジーのメッセージを強調するつもりはないという監督だが、ブラジルではアマゾンの森林保護は大きな課題であり責任でもある。森林伐採の危険性や、自然と共生する方法について先住民のコミュニティから学ぶことの重要性をより強く認識している。「環境に対してより高い意識を持つ新しい世代の子どもたちが育ってきていることを私は確信しており、それが私に希望を与えてくれるのです」と言う。
音楽を担当したのはアンドレ・ホソイで、彼が率いるパーカッショングループ・バルバトゥッキスは監督と書き下ろした主題歌「Daqui prá lá, de lá prá cá (pra Naná)(ここからあそこへ、あそこからここへ(ナナへ))」を担当。中国、ベネズエラ、コロンビアの楽器を使って多様な音色を生み出し、カラフルで異なる要素が融合する強さを表現している。カエターノ・ヴェローゾやジルベルト・ジルと並ぶムジカ・ポプラール・ブラジレイラの代表的ソングライター、ミルトン・ナシメントの「Bola de Meia, Bola de Gude  ボーラ・ヂ・メイア、ボーラ・ヂ・グーヂ (手毬にビー玉)」のインストゥルメント曲が映画の中核をなし心地よい没入感へと観客を誘う。
欧州及び中南米のスペイン語・ポルトガル語圏諸国から構成されるイベロアメリカでは、2000年代末から共同製作など地域間での協力の促進やアニメーション業界の関係強化に向けた取り組みが進んでいる。*2018年には大西洋両岸の国々を結ぶネットワークを生み出す必要性から、アルゼンチンのアニメーション作家クリノ・クリスチャーニにちなんでクリノ・アワードが誕生し、受賞作がアカデミー賞やアヌシー国際アニメーション映画祭などでノミネートや受賞をし始めている。日本でも8月にはチリのクリストバル・レオンとホアキン・コシーニャの二人組による初の長編映画『オオカミの家』が公開され、2023年カンヌ国際映画祭のスペシャルスクリーニング部門で上映されたスペインのパブロ・ベルヘル監督の「ロボット・ドリームズ」の公開が決定するなど注目度が高まりつつある。その牽引役を担っているのが長編2作目の『父を探して』が2016年のアカデミー賞の長編アニメーション映画賞にノミネートされ『ウルフウォーカー』や『未来のミライ』なども受賞したアニー賞の長編インディペンデント作品賞を、部門創設の年に初受賞したアレ・アブレウだ。
*cartoon brew
「ペルリンプス(Perlimps)」とは、ポルトガル語でホタルを意味するピリランポスにヒントを得た造語。
ストーリー
テクノロジーを駆使する太陽の王国のクラエと、自然との結びつきを大切にする月の王国ブルーオの二人の秘密エージェントは、巨人によってその存在を脅かされる魔法の森に派遣されている。クラエはオオカミにキツネのしっぽ、ブルーオはクマにライオンのしっぽ、ホタルの目を持つ不思議な姿をしている。二人は正反対の世界からやってきて、全く異なる文化を持ち、一世紀にわたって対立を続けていた。二人が探しているのは、森を救うという「ペルリンプス」だ。光として森に入り込み、様々なエネルギーをもたらした。しかし巨人の支配が始まり、だれもがペルリンプスの存在を忘れてしまっていた。反発しながらもペルリンプスの手がかりを探して、二人は協力し合うことにする。音と光に導かれ、たどり着いた場所にはカマドドリのジョアンという鳥の姿をした老人がいた。老人はかつて巨人だった時のことを二人に語り始める。そしてペルリンプスに呼ばれてこの森に帰ってきたことも…。老人は家へ帰るよう二人を諭し、「出会いの場」へと導く。最初に出会った場所に戻り、ペルリンプスを探し続ける二人に、突然巨人のサイレンが鳴り響く。残された時間はもうない。大きな波が森を破壊し飲み込もうとしていた…。そして物語は思いがけない結末にたどり着く。そこに隠された現代への問いかけとは?
キャラクター紹介
クラエ
<太陽の王国>
クラエをブルーオはキツネと呼ぶが、クラエは自分はオオカミだと言う。太陽の国はテクノロジーに長けており、録音機や風速計になり、催眠光線を発射、光の剣にもなる時計のような機械を持っている。
ブルーオ
<月の王国>
ブルーオは、顔はクマでしっぽはライオン。ホタルの目を持ち、嘘を見破ることができ、いろんな動物の優れた能力を併せ持つという。月の王国は精神性に優れており、車輪付きの城で旅をして、毎晩月の女王が素敵な物語を語ってくれる。だがブルーオの父親は戦争に行って戻ってこない。
カマドドリのジョアン
ペルリンプスは、巨人の世界に極秘エージェントとして潜入し、巨人に変装する。しかし巨人の世界において光の速さで時が過ぎ去るなか、いつしか自分が何者か忘れてしまう。ジョアンはある日ペルリンプスとしての自分を思い出し、この森にかえってきた。カマドドリは、中南米に生息する鳥。その巣がカマド(オーブン)の形に似ていることからこう呼ばれる。
監督・脚本・編集
アレ・アブレウ   |   Alê Abreu
1971年3月6日、サンパウロ生まれ。13歳のときにサンパウロ市内にあるMuseum of Image and Sound(MiS)のアニメーション教室に通い始める。そこで彼は、ルネ・ラルー監督の『ファンタスティック・プラネット』や『時の支配者』、漫画家・脚本家メビウスの『ブルーベリー』シリーズといった作品に出会い、大きな影響を受けた。「彼らは私にアニメーションの別の面を見せてくれました。彼らのおかげで、私は自分の人生で何をしたいのか、もはや迷うことはありませんでした」と話している。
1990年代、アブレウは2本の短編アニメーションを制作し、イラストや広告など多くのプロジェクトに携わった後、初の長編映画『Garoto Cósmico(宇宙の少年)』を制作した。2008年にブラジルで公開された青少年向けのSF映画で、すべての生活がプログラムされた世界に住む子どもが主人公だ。
1960年代から1970年代のラテンアメリカの音楽とそのプロテストソングを使い、南米大陸の激動の歴史のさまざまな時代をたどるアニメーション・ドキュメンタリー「Canto Latino」の準備中だった2006年、アブレウは自分のノートを開き、映画『父を探して(原題:少年と世界)』のきっかけとなった「少年」のキャラクターのスケッチを見つけたという。この作品は一人の少年の目を通して描く南米大陸の歴史と冒険の物語で、2014年アヌシー国際アニメーション映画祭最高賞クリスタル・アワード、2016年アニー賞長編インディペンデント作品賞を受賞し、彗星のごとく現れた新たな才能に世界が驚いた。2016年アカデミー賞長編アニメ賞に南米の長編アニメ作品として初ノミネートされた。
音楽
アンドレ・ホソイ
カンピーナス州立大学で主に作曲と音楽制作を学び学士号を取得。
作曲家、ギタリスト、ボディ・パーカッショニスト(体を叩くなど、体を楽器にして音楽を表現する)、音楽プロデューサー、教師、グラフィック・アーティストとして幅広く活動している。
バルバトゥッキスのグループ結成メンバーで総合コーディネーターを務める。最近ではレナト・エプスタインと共同でゲーム「アングリーバード・リオ2」のサウンドトラックを制作したほか、レナト・エプスタイン、タウラ・スティンソンと共同で、カルロス・サルダーニャ監督の映画「ブルー2 トロピカル・アドベンチャー」(2014)のサウンドトラックに収録された楽曲「Beautiful Creatures」を作曲した。2016年のリオデジャネイロ・オリンピックの閉会式に作曲とパフォーマーとして参加した。これまでに50以上のCDジャケットを制作した他、ボビー・マクファーリンとサンパウロ市立劇場で演奏した。教育者としてはリカルド・ブレイム指導のもとエスパソ・ミュージカル音楽教育者養成学校の講師として、またヴェラ・クルス・カレッジとカンタレイラ・カレッジで教鞭をとる。幅広い分野で活躍し、重要なイベントやプロジェクトでの音楽的貢献を果たし、多才で創造的なスキルでブラジル音楽界に足跡を残している。
コメント
五十音順
色を奏でる音楽と色彩の中の光と影、
そのコントラストで描かれる情景は大きな試練と共に、
希望に満ちた始まりへと繋がっている。
岩井澤健治
アニメーション映画監督
子どもの頃のあの友達は、
自分よりちょっぴり大人に見えていた。
異なる環境で育った友達との違いに、
大人になってから気づいた時の切ない気持ちと、
どこか懐かしさを感じさせるカラフルな風景が、
子どもの頃に大事にしていた宝箱やアルバムを
開いた時を思い出すような映画です。
木村絵理子
キュレーター/弘前れんが倉庫美術館副館⻑兼学芸統括
見たことのない色彩で描かれる、魔法の森。
クラエとブルーオが目指しているものは同じであるはずなのに、
すれ違いが生まれてしまう。
この世界で私たち人間が本当に守りたいものとは何なのか、
今こそ気付くべきだ。
倉持明日香
タレント
森羅万象の霞の中で
キツネ狼の子と熊ライオンの子のささやかな命がポッと灯る。
あれは私たち。
こんなに切なくて素晴らしい生きものだったかと驚いて震える。
良い報告・体の芯からエネルギーが蘇る!
悪い報告・これを見ないとあっという間に巨人になってしまう。
鴻池朋子
アーティスト
私たちは巨人ではなく、
この世界に生まれたちっぽけな生き物なのだ。
深呼吸して、
素直な眼差しで見つめることの大切さを教えてくれる、
色彩豊かな美しい作品。
今こんな時代だからこそ、
多くの人に見てほしい。
tupera tupera
絵本作家
まばゆい色彩に何度も目を奪われる。
ふたりの主人公の愛くるしさと、
今そこにある待ったなしの問題とが、葛藤する。
その先に、子どもたちへのやさしさが溢れている。
細田守
アニメーション映画監督
遙か遠い昔の時と今の時を
メビウスの輪のようにつなげたお話。
映像の美しさに引き込まれ
一緒にペルリンプスを探す旅に出た時、
森の守り人の仲間になれるように感じる。
しかし、深いところで大きな試練が待っている怖さもある。
ペルリンプスが「希望」の化身でありますように。
南研子
NPO法人 熱帯森林保護団体代表
なぜ赤子は美しいのか? それは”無垢”であるから・・・
まだ何も見聞きをしていないから・・・
この世界はとっくに”無垢”であることを放棄してしまった
この血塗られた歴史はもはや誰にも書き換えられない
だが僕らの心の隅に 一縷の”無垢”が残されているならば ペルリンプスは必ず現れる
この世界が津波に飲み込まれようと 嵐に吹き飛ばされようと
彼は必ず現れる・・・
宮沢和史
シンガーソングライター
エキサイティングな監督による美しい映画だ。
ビジュアルとアニメーション、
そしてタイムリーな物語が素晴らしい。
平和への願いや、自然への思いやりを若い観客はもちろん、
そうでない観客にも思い出させてくれるだろう。
トム・ムーア
『ウルフウォーカー』監督
とにかくゴージャス。
平和主義とエコロジーの寓話。
純粋な宝石。
マルセル・ジャン
アヌシー国際アニメーション映画祭アーティスティック・ディレクター
ブラジルの「星の王子さま」のようだ。
cinepop.com
子どもたちへのまばゆいばかりのラブレター。
芸術的な野心と視覚的な複雑さを持つ映画。
Variety
この映画はまるでマティスが旅したかのような魅惑的な森を描いている。
Les Inrockuptibles